第59話 真理との邂逅-10
「それにしても、さっきおれたちを助けてくれた人…、あの人がいなければきっと追っ手に追いつかれていた。いったい誰だったんだろう…。どこかで見たことがあるような気もするんだが…。」
アルの疑問にディマンシュがぼそっとつぶやいた。
「彼があそこまで義理堅いとは思わなかった。」
「ディマンシュ、彼が誰だか知ってるのか?」
「ああ、今回の脱走の手助けをしてくれた吟遊詩人だ。実を言うとぼくのボルドー時代の知り合いだ。フランス中を旅して回っているが、これまでこの地方にも何度か来ていたそうだが、その時は残念ながら会えなかった。しかし、今回ようやく巡り会えたというわけだ。信頼の置ける人物で、ぼくが脱走の手助けを頼んだら二つ返事で引き受けてくれた。ぼくとしては彼の素晴らしい演奏でエーグ・モルト中の耳目を引きつけてくれたらそれで十分だと考えていたが、彼はそれ以上のことをやってくれた。」
「しかし、吟遊詩人が兵士を相手に? いや待てよ。吟遊詩人…、吟遊詩人…。」
アルはパリでの一件を思い出した。
「あ、道理で見たことがあるような気がしたんだ。おれがパリで出会った吟遊詩人の男だ。」
「君も知ってたのか。」
「確かにあの男なら武術の腕前も相当なものだ。」
「彼と何かあったのか?」
「そう、彼はロランの死を歌で告げていた。はじめはでまかせを歌にする憎らしい男だと思った。それで突っかかっていったら、帽子の羽根飾りで脅されたんだ。」
「彼は気の短いところがあるからな…。」
「でも、結局、彼が歌っていたのはみんな本当のことだった。おれたちがヴィラール元帥に騙されたことに気付いた時は、もう何もかもが遅かった。悔やんでも悔やみきれない思いを抱えて…、おれとジャンまでもがばらばらになってしまった…。カミザールが敗北したのも、ロランが殺されたのも、みんな、みんな、おれたちのせいだ…。」
アルは血がにじむくらい唇を噛んだ。
「アル…、そのことに関しては、君たちだけが責任を負うべきものじゃない。…ぼくにだって、その責任の一端はあるんだ。」
「どうして君が?」
アルはこの件についてはディマンシュに責められるとばかり思っていたのに、意外な言葉に驚いた。
「だって君はあの時あれほど反対していたじゃないか。それなのに、おれは君の言葉を聞く耳を失ってしまっていた。少なくともおれが考え直せば、ジャンも考えをあらためたかもしれないのに…。」
「ぼくは君をもっと粘り強く説得すべきだった。なのに…。」
「それ以上、おれをかばわないでくれ。おれはシャルロットとの再会で有頂天になっていたんだ。」
「そう、問題はそこだったな。ジャンには父親と弟を、そして君にはシャルロットを。実にうまいやり方だった…。」
ディマンシュは苦しげに息をついた。
「あまりしゃべらない方がいいんじゃ…。」
「いや、しゃべらせてくれ。君とまたこうして話せるようになるなんて、ぼくはうれしくてたまらないんだ。」
アルの疑問にディマンシュがぼそっとつぶやいた。
「彼があそこまで義理堅いとは思わなかった。」
「ディマンシュ、彼が誰だか知ってるのか?」
「ああ、今回の脱走の手助けをしてくれた吟遊詩人だ。実を言うとぼくのボルドー時代の知り合いだ。フランス中を旅して回っているが、これまでこの地方にも何度か来ていたそうだが、その時は残念ながら会えなかった。しかし、今回ようやく巡り会えたというわけだ。信頼の置ける人物で、ぼくが脱走の手助けを頼んだら二つ返事で引き受けてくれた。ぼくとしては彼の素晴らしい演奏でエーグ・モルト中の耳目を引きつけてくれたらそれで十分だと考えていたが、彼はそれ以上のことをやってくれた。」
「しかし、吟遊詩人が兵士を相手に? いや待てよ。吟遊詩人…、吟遊詩人…。」
アルはパリでの一件を思い出した。
「あ、道理で見たことがあるような気がしたんだ。おれがパリで出会った吟遊詩人の男だ。」
「君も知ってたのか。」
「確かにあの男なら武術の腕前も相当なものだ。」
「彼と何かあったのか?」
「そう、彼はロランの死を歌で告げていた。はじめはでまかせを歌にする憎らしい男だと思った。それで突っかかっていったら、帽子の羽根飾りで脅されたんだ。」
「彼は気の短いところがあるからな…。」
「でも、結局、彼が歌っていたのはみんな本当のことだった。おれたちがヴィラール元帥に騙されたことに気付いた時は、もう何もかもが遅かった。悔やんでも悔やみきれない思いを抱えて…、おれとジャンまでもがばらばらになってしまった…。カミザールが敗北したのも、ロランが殺されたのも、みんな、みんな、おれたちのせいだ…。」
アルは血がにじむくらい唇を噛んだ。
「アル…、そのことに関しては、君たちだけが責任を負うべきものじゃない。…ぼくにだって、その責任の一端はあるんだ。」
「どうして君が?」
アルはこの件についてはディマンシュに責められるとばかり思っていたのに、意外な言葉に驚いた。
「だって君はあの時あれほど反対していたじゃないか。それなのに、おれは君の言葉を聞く耳を失ってしまっていた。少なくともおれが考え直せば、ジャンも考えをあらためたかもしれないのに…。」
「ぼくは君をもっと粘り強く説得すべきだった。なのに…。」
「それ以上、おれをかばわないでくれ。おれはシャルロットとの再会で有頂天になっていたんだ。」
「そう、問題はそこだったな。ジャンには父親と弟を、そして君にはシャルロットを。実にうまいやり方だった…。」
ディマンシュは苦しげに息をついた。
「あまりしゃべらない方がいいんじゃ…。」
「いや、しゃべらせてくれ。君とまたこうして話せるようになるなんて、ぼくはうれしくてたまらないんだ。」
この記事へのコメント
軍師・陸遜は、英知の参謀。
陸遜軍に城を奪われ、領土を奪われ、残した家族もさぞかし酷い目に遭っていると思いきや、家族は皆、陸遜に手厚く扱われ、これほどまでにと思うほど良くしてもらっていた。
敵軍は陸遜の太陽のソフトパワー作戦で総崩れ。将と僅かな側近を除いて、皆陸遜に降ってしまった。
北風のハードパワーは、死を覚悟の捨て身の殉教者には通じないが、心の急所を突く罠には要注意ですね。